あたしが、たいていのところに転がっているおしゃべりな女の子じゃない代わりに、
あいつはその性質を倍にして持ってるみたいだ。
ううん、倍なんかじゃ足りないくらい。 「パンテーラ!パンテ−ラ!」 あいつが騒がしいのは、おしゃべりだからだけじゃない。 ドタドタという靴音と、ジャラジャラという金属音と、ストロベリーピンク色のリボンが付いた大きな箱と一緒にあたしの部屋の扉を乱暴にあける。 せっかく綺麗に飾ったのに、扉のレースの飾りが落ちそうになってるじゃない。 何度直しても同じことの繰り返し。何度言ったって同じことの繰り返し。 だから、あたしはいつだって不機嫌な顔を作って振り向く。 笑顔なんてみせない。 世の中のたいていの女の子みたいに、あたしはあたしを安売りなんてしない。 甘いジャムは好きだけど、苺ソースをかけて召し上がれ、 なんて。ばかみたい。 もう少し静かに歩けないのかしら。 もう少し静かに扉を開けないのかしら。 女の子の部屋に入るのにノックもできないなんて。 そんなデリカシーもマナーもない人に、笑顔なんて作れないし、 二度も名前を呼ばなくても聞こえてる。 あたし耳はいいんだから。 遠くにいたって、ひそひそと悪口を言ってたってちゃんと聞こえてる。 おしゃべりな人ってだいたい声も大きくて、あたしの鼓膜は過剰なくらい揺れてしまう。 それは、すごく、いたい。 「はい、これ!」 あいつが腕にかかえたストロベリーピンクのリボンが付いた大きな箱をあたしに押し付けるみたいにして渡す。 あたしは、慌てて抱えきれなくて床に落としそうになるけど、あいつが反対側を支えて、満面の笑みを浮かべる。 開けてみて、って その笑顔が期待して待ってるのが分かったから、あいつが黙って待つなんてそんな珍しいことがあるものだから、 あたしも、黙って、ピンクのリボンを少し乱暴にほどく。 あたしは、黙って、可愛い模様の包装紙を乱暴に破く。 あいつは、黙って、うれしそうに見てる。 本当は知ってる。 開けたら、きっとあいつは、またあの大きな声で「驚いた?」って聞いてくるけど、あたし本当は中身を知ってる。 あたし耳はいいんだから。 遠くにいたって、ひそひそと悪口を言ってたってちゃんと聞こえてる。 おしゃべりな人ってだいたい声も大きくて、あたしの鼓膜は過剰なくらい揺れてしまう。 あたし耳はいいんだから。 (それだけじゃないって知ってる) うるさいぐらいのあいつの声にあたしの鼓膜は過剰なくらい揺れてしまう。 遠くにいたって、ひそひそと内緒話をしていたってちゃんと聞こえてる。 あたしの耳は、うるさいぐらいのあいつの声には過剰なくらい揺れてしまう。 それは、すごく、くやしい。 ばかみたい、 あたしはおしゃべりな女の子じゃないけれど。 苺ソースをかけたみたいに、真っ赤になってるに違いないもの! だから、笑顔なんて作れない 甘いジャムは好きだけど、苺ソースをかけて召し上がれ、 なんて。ばかみたい。 だから、 知らないふりをする 内緒の、プレゼントなんて! |