Two drop

バタンとドアが閉まって、しいんという音が玄関に響いた。
身動きはとれずにいた。この後、どうすればいいのか分からなかった。
ただ閉まったドアが、役立たずの僕を責めているように感じた。
「フゥ太」
ふっと、声と一緒に影が落ちてきたと思うと、
ビアンキ姉の腕が伸びてきて、彼女の胸が僕の視界を覆った。
「泣いてもいいのよ」
そう言いながら、ちらりと見えた彼女の顔が泣きそうだったのを、僕は見逃さなかった。
謝ったら余計に気を使わせてしまう気がして、ありがとうと伝えたら、僕を包む腕がぎゅっと締まった。
強く抱かれた肩が少し痛くて、胸がもっと痛くなった。
もう、ごめんなさいもありがとうも、声にならなかった。

溢れる涙の止め方を僕は知らない。

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