三人の世界はあまりに閉鎖的だ。 幼い少年が吐き捨てるように乱暴に言葉を投げ付けた。 「あなたたちが受け入れているからいけないんだ」 少年がそういう風に言葉を乱暴に扱う様子は珍しくて、千種は一瞬、呆気にとられてから、 言葉の意味を探した。 「何の話」 「あなたたちのせいだ。あの人があんな風なのは」 『あの人』の言葉にまで疑問を浮かべて問う必要はない。自分と少年が語り合う 話題なんて数えるほどもないし、ましてや話題にする人物なんてこの世に一人しかいない。 「骸様が何」 「あなたたちが命を貸して、あなたたちがあなたたちが」 駄々をこねるように言葉を繰り返して、終いにはよく分からない言葉を喚き出した。 少年のそういった態度は初めてで、千種は戸惑ってしまう。 面倒だ。 煩わしい。 だから、女と子供は関わりたくないのだ。(千種の場合、女とか子供とかというより世界そのものが煩わしかった訳だけれど。 その中でもヒステリックな女と癇癪持ちの子供は、いつだって近寄りたくはないものだ) うるさく喚くMMはもちろん、どうやって扱えばいいか分からないこんな幼い少年なんて 正直なところ、不愉快でしかないのだけど、どうしようもない事実としてこの少年は骸様のお気に入り(これこそ不愉快でしかない) だということははっきりしていたから面倒でも煩わしくても世話をしないわけにはいかなかった。 「…貸してるんじゃない。これはあの人のものだ」 聞いてるのかどうかも疑わしい喚き続ける少年に一言告げると、それ以上はその場には居られなかった。 どう様子を見ても、おかしくなったようにしか見えないのに少年ははっきりと自分に向けて言葉を投げつけてきたからだ。 「勘違いしてる!」 やめてくれないか 「そうだよ!終わりが無いからいつまでたってもあの人は子供のままだ」 やめてくれないか 変化など求めてはいないのだ。 「それはあなたのものなのに!ひとつしかないものなのに!もっと大事にするべきだ!」 少年の声を背に千種は感情を押し殺すようにして、できるだけ、ゆっくりと扉をしめた。 それなのに、今にも壊れそうな扉はギシギシと鳴り、向こう側ではまだ変化を求める声がする。 |